プロフィル：
殿村郁也さん。
昭和13年（1938年）東京生まれ。
父親の仕事で4歳の時に中国の
青島（チンタオ）に。
終戦後7歳で帰国。富山県朝日町で育つ。
中学3年生から鮎毛バリ釣りを始める。
18歳で上京後、しばらく竿を置くが30代半ばで
鮎毛バリ釣り再開。
東京毛バリ釣り研究会の創立時からのメンバーで、2001年から同会の会長。

－：　　中学3年生から鮎毛バリ釣り、早いですね？
殿村： 父親がとにかく夏はアユ釣り、着物の染色職人で夏は暇だったんです。
小学校4年生から、ぼくはオヤジの釣ったアユをビクに入れるビク持ちでね、やりたいんですけどジッと我慢していました。 中学3年生になって、二間半の竹竿で初めて鮎毛バリ釣りをしたんです。 忘れられないのは、初めて自分の小遣いで買った毛バリ。「八つ橋荒巻赤ツノ」でした。

－：　　神通川でやったんですか？
殿村： いいえ、朝日町の小川という川です。釣れると竿を縮めないで引っこ抜きです。
黒部と姫川との間に小川、笹川、境川という小さな川が3つあるんです。
今でもアユは遡上する川です。その3つの川で遊んでいたんですが、18歳で上京してから釣りはあきらめて、登山です。 テントを担いで北アルプスを縦走していましたね。

－：　　東京で鮎毛バリ釣りを始めたきっかけは？
殿村： 取引先の営業マンがウチのボスが鮎毛バリ釣りをやりますよ。というので連絡したら、 それが澤渡要さん（現・日本鮎毛バリ釣り団体協議会会長）だった。
30代後半でしたね。独りで酒匂川など行きだした時だったので、当時の「日本毛バリ釣り連盟東京支部」に入れてもらったんです。 ところが2年たらずで、この東京支部が分裂してしまい、現在の会が発足しました。昭和57年（1982年）のことです。
それからですね。本格的にやりだしたのは。

写真は青森・追良瀬川の殿村さん

－： 　当時良く通った河川はどこですか？
殿村： 　那珂川の黒羽ですね。那珂川が良く釣れたんです。関口昭二さん（初代会長）は那珂川・烏山に船を買って置いておいたくらいですよ。（笑い）
東北に行きだしたのは今の会が出来た頃からですね。 当時、東北の河川は本当に良く釣れました。あの頃に比べると遡上が随分減っているんじゃないですか。

－：　 オリジナルの毛バリを沢山開発されていますが、いつからですか？
殿村： 50歳を超えてからですね。
「殿忠」は福島の「イワキ2号」というハリが元鉤です。神通川の落ちアユで大当たりしましてね、地元の人が『俺のハリと交換してくれ』と評判になったんです。
「田端美人」は八つ橋の極小巻きです。これも最初に神通川で当たりま したね。
「黒八つ橋」は八つ橋に元桜をほどこしてあります。
これは那珂川で 好調なハリでしたね。
ボクの自信バリ、信念バリ。必ず毛バリケー スに入っています。
ほかには「黒松」が皆さんから評価されていますが、これらは小川忠造さんと協同開発した毛鉤ですよ。
銘々はみんな小川 さん。
(＊田端美人などという洒落たネーミングをした小川忠造さんには、次回、このコラム欄に登場していただき。開発毛鉤の苦労話とウンチクをうかがう予定です)

殿忠	田端美人
黒八つ橋	黒松

－：　　鮎毛バリ釣りの面白さはどこにあるんでしょう？
殿村： 友釣りと比較して話ますとね。友釣りは経験が長い人、上手な人が必ず沢山釣りますよね。
ところが、鮎毛バリ釣りは昨日始めた人にドンドン釣られて負けることがあります。
この違いが面白いんじゃないでしょうか。 例えば隣の人に釣り負けて、このハリですよと見せられても、 同じ毛バリは使いたくありませんから、意地でも別のハリで釣ってやろうと毛バリを探しますよね。
で、結局毛バリケースの中のハリがドンドン増えていく、これも楽しいんです。

－：　　忘れられない大釣りがありますか？
殿村： 9月半ばの秋田・真瀨川。落ち鮎釣りですが、波打ち際で釣れたんです。
25～6cmの大鮎でしてね。ハリスをブツブツ切られる。
釣り上げて両手で掴まないと逃げられる、大きかったですね。
その時の毛バリは「特夏秋」という毛バリです。 少し前に台風の増水で米代川の
鮎がいったん海に流され、真瀨川に差し返してきたのかもしれません。
30年ほど前です。ビクがずっしり重くなった大釣り、忘れられません。

写真（殿村さんの使い込んだ毛バリケース。この位の数の毛バリを、川によって多少入れ替えて持っていくそうです）

－：　最後に会長として心がけていることは、なんですか？
殿村： 釣り人はみんな、子供がそのまんま大人になった人達です。ですから我がままで、意見がみんな違う。でもそれで良いんです。
ですから、あまり細かいことは決めずに、おおらかにみんなで楽しめればと考えています。

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